
遺産分割の期間制限について
相続が発生し、遺産分割がされないまま長期間放置されると、
遺産の管理や処分が難しくなるなど、様々な問題が生じるおそれがあります。
こうした問題の解消を促進するため、民法が改正され、遺産分割に関する期間制限が新たに設けられました。
今回は、令和5年4月1日に導入された遺産分割の期間制限について説明いたします。
【目次】
1.遺産分割とは
2.これまでの遺産分割の問題点
3.遺産分割の民法改正について
4.遺産分割の猶予期間とは
5.まとめ
1.遺産分割とは
遺産分割とは、法律で定められた相続人全員が参加し、
被相続人(亡くなった方)が残した相続財産の分け方を協議・決定する手続きのことです。
遺産分割をする際には、民法であらかじめ定められた法定相続分を基礎としつつ、
特別受益(例えば、生前贈与を受けていた場合)や寄与分(例えば、療養看護等の貢献をしていた場合)といった事情を考慮して、
具体的相続分を算定するのが一般的です。
なお、法定相続分の基本的なルールは以下の通りです。
子供や直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いる場合は、原則として相続分は均等に分けられます。
ただし、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。
<配偶者と子供が相続人である場合>
配偶者2分の1 子供(2人以上のときは全員で)2分の1
<配偶者と直系尊属が相続人である場合>
配偶者3分の2 直系尊属(2人以上の時は全員で)3分の1
<配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合>
配偶者4分の3 兄弟姉妹(2人以上の時は全員で)4分の1
2.これまでの遺産分割の問題点
これまで、具体的相続分の割合に基づいて遺産分割を求めることには、特に期間の制限が設けられていませんでした。
そのため、長期間にわたって請求を放置していても、
具体的相続分の割合による分割を希望する相続人には不利益が生じることがないため、
早期に遺産分割を請求するインセンティブが働きにくく、遺産分割の支障となるおそれが問題視されていました。
また、相続が発生し、遺産分割がされないまま長期間放置されると、
相続が繰り返されて多数の相続人による遺産共有状態となるため、遺産の管理・処分が困難になります。
さらに、時間の経過とともに、具体的相続分に関する証拠等がなくなってしまい、
遺産分割が難しくなるといった問題もあります。
3.遺産分割の民法改正について
このような遺産分割がされないまま長期間放置されるケースを解消するため、
令和5年4月1日に民法が改正され、遺産分割に関する期間制限が新たに設けられました。
原則として、相続開始(被相続人の死亡)時から10年を経過した後に行う遺産分割は具体的相続分ではなく、
法定相続分または遺言によって定められた指定相続分によって、画一的に行うこととなります。
ただし、次のように例外として引き続き具体的相続分による分割が認められるケースもあります。
①
10年経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割を請求したとき
②
10年の期間満了前6カ月以内に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、当該事由消滅時効時から6カ月経過前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき
さらに、10年が経過していても、相続人全員が具体的相続分による遺産分割をすることに合意した場合には、具体的相続分による遺産分割も可能です。
4.遺産分割の猶予期間とは
令和5年4月1日までに開始した相続についても、
相続が何年前に開始したかにかかわらず、新たに設けられた期間制限が適用されます。
ただし、令和5年4月1日時点で、相続開始から既に5年を超える期間が経過している場合、
令和10年3月31日までの間は、具体的相続分による遺産分割をすることができるよう、猶予期間が設けられています。
※令和15年3月31日までではないので注意が必要です。

5.まとめ
今回の記事はいかがでしたでしょうか?
相続はご家族にとって非常に繊細な問題です。
だからこそ、もしもの時に備えて、事前に準備をしっかりとしておくことが大切です。
遺言書の作成や、家族信託などの制度を活用することで、
遺されたご家族が迷わず、円満に遺産分割を進められる環境を整えることができます。
この記事が相続について考えるきっかけとなりましたら幸いです。
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