土地相続登記義務化
【目次】
1.土地相続登記義務化とは
2.所有者不明土地になると何が困るのか
3.相続登記義務化と関連法案
4. まとめ
1. 土地相続登記義務化とは
これまで、相続が発生した場合でも相続登記は義務ではなかったため、土地の評価が低かったり、手続きが面倒だと感じた場合など相続登記を放置しているケースが多々ありました。
土地の所有者が不明の空き家や荒れ地は処分することが困難になる事が多く、周辺の土地の地価が下がったり景観が悪化したり、更には一部の所有者不明の土地が原因で公共事業や都市開発が進まないという問題が起こってしまいます。現在、このような所有者不明の土地の増加が社会問題となっており、所有者が分からない土地がこれ以上増えないように相続登記が義務化されることになりました。
法務省によると、不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず,又は判明しても連絡がつかない土地を所有者不明土地と定義しています。この所有者不明土地が発生する大きな原因として、平成30年版国土交通省土地白書※1によると、不動産の相続登記がされないことが約66.7%、そして約32.4%住所変更登記がされないことが上げられています。
そこで、相続登記と住所変更登記の義務化、所有者の連絡先情報の把握のための法案が2021年2月10日に法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議において決定され、2021年4月23日国会での法案成立をしました。改正法は、2024年をめどに施行される予定です。
2.所有者不明土地になると何が困るのか
■土地の売却がしにくい
相続登記や住所変更登記が放置されていて登記簿で売り主の名義が確認できなければ、購入希望者は危険を感じ、取引に応じてくれません。
■土地活用がしにくい
例えばアパートやマンションを建てて運用したいときに、ハウスメーカーは土地の権利者を正確に知るために登記簿で確認します。所有者の名義が確認できなければ、業者側が危険を感じ、取引に難色を示します。また、融資を受ける場合には、一般的に建設予定地を金融機関に担保として提供します。建築するために土地を担保に出したい場合も、金融機関は必ず登記簿で土地の名義人を確認しますので、正確な所有者を確認できなければ、金融機関は抵当物件として利用することを拒絶するはずです。
■正しい相続ができない
数代にわたり相続登記が放置されているケースでは、被相続人となる人が相続登記の放置されている物件の共有持ち分を仮に保有していたとしても、どれくらいの持分なのか不動産登記簿から確認できませんし、実際にはそもそも持分を保有していない可能性もあります。
遺言書を書くにしても、相続対象となる財産を正しく指定できないことから、遺言の内容の一部が無効になることや、場合によっては遺言全体が無効になってしまう可能性もあります。
■公共事業や都市開発が進まない
一部の所有者不明の土地が原因で公共事業や都市開発が進まないという問題が起こってしまいます。
3. 相続登記の義務化と関連法案
■相続登記の義務化
相続した人は、自分が相続した事実を知ってから3年以内に相続登記をしなければならないという義務規定を設ける。義務を果たさない場合には、諸般の事情を考慮して正当な理由がないと認められる場合に限り、10万円以下の過料に処する
■相続登記の手続きを簡便化(相続人である旨の申出制度)
3年以内の相続登記が難しい場合の措置として、相続をした人が登記官に自分が相続人である旨の申し出をすれば、登記官が職権で登記を行うことができ、相続人が相続登記の義務を履行したものとみなす
■住所氏名の変更登記の義務化
所有者が住所氏名を変更したときは、2年以内に住所氏名の変更登記をしなければならないという義務規定も設ける。義務を果たさない場合は、5万円以下の過料。
■土地管理制度
所有者不明土地管理制度や、管理不全土地管理制度を新たに設け、裁判所が選任する管理人による柔軟かつ効率的な管理ができるように合理化
■登記の抹消
既に存在しない法人の担保権に関する登記や、現時点では意味のない地上権や賃借権などについては、要件と手続きを定めて、抹消を簡略に行う仕組みを創設
■土地所有権の放棄
これまで民法上に規定がなかった土地所有権の放棄を可能にする仕組みを創設。
要件を満たせば相続した土地を国庫に帰属させることができるが、その際、管理負担金を納入する必要がある
4. まとめ
相続登記義務化により、相続人にとっての負担が増加する場合があるかもしれません。しかし、相続登記義務化以外にも登記の手続きの簡略化もあわせて改正される予定もあるので、現時点で、相続登記未了の不動産を所有している方は、改正法が施行されるまでの間に、少しずつ整理していくことや準備をすると良いかもしれません。
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